DANIEL AVERY

「Done Logicのスピリチュアルなホームはダンスフロアだった。このレコードのものは、間違いなく道だ。あの深い夜とかすんだ朝、霧の向こうにインスピレーションを探して」
2013年の「Drone Logic」の素晴らしさを吸収しつつ、幻想的にフォローアップした、ダニエル・アヴェリーのセカンド・アルバム「Song for Alpha」。これによって世界中から賞賛を受け、アヴェリーはこの10年間を代表するテクノDJのひとりとしての確固たる地位を築いた。そんなアルバムが、ナイトクラブやフライト、車の助手席、そしてホテルの部屋で過ごした移動だらけの彼の生活から大きなインスピレーションを得ているというのは実に啓発的なこと。そのような移動だらけの日々によって引き起こるシニシズムとは異なり、音楽世界に対するアヴェリーの考え方はものすごくポジティブである。
「エレクトロニックミュージックはユニークだ。音が直ちに体を揺らし、その周りにあるカルチャーが人生に深く踏み込んでいく。僕は、クラブにいる時は音楽に身を任せたい。D Jがゼロからフロアの雰囲気をつくり上げるのにはその場にいる全員の忍耐と努力が必要だけど、その瞬間が訪れた時、時計の針が止まるんだ。そんな瞬間をD Jとして常に求めているし、そういう瞬間があるからこそ僕はプロデューサーとしての道を歩み続けているんだ」
その道がアヴェリーの音楽を影響し始めたのは、「直線的だが、無限のトリップ感」「息を潜め合い、レコードごとの空間を保つようにつくられたようなミックス」「我を忘れる音楽体験」と絶賛されたアヴェリーによるD J-Kicksのコンピレーションがリリースされた2016年あたりから。
「Drone Logic」がD Jギグ向けにつくられていることに対し、「Song for Alpha」は異なる空間を探索することに挑戦している。アヴェリーの身の回りに変化があったから、彼のサウンドもまた変化した。ダンスフロア向けの数々のトラックを枢軸に展開されているが、それらこれまでになく低密度で、異様な音になっている。これらはクラブレコードかもしれないが、清潔な白い空間ではなく、埃っぽくて暗い部屋用につくられている。「Stereo L」のアシッド音のループがリズムトラックを切り取り、「Projector」と「Clear」は初代のレイブレコードを彷彿とさせ、そしてC J Bollandの「Horsepower」を懐かしむ「Diminuendo」のパーカッションが、大脳皮質に深く刺さるクラクション、そしてスピーカーが置かれた棚からジェット機が離陸するようなブレークダウンを融合させている。
新たなエネルギー源と成長の期間をもって、アヴェリーの音楽の表現方法はさらに広がった。「First Light」と「Days From Now」のようなアップリフティングなアンビエント・ララバイは、催眠術のように迫り来るテクノと完璧に馴染んでいる。アヴェリーが彼のシグネチャーであるサイケデリック・エレクトロニックサウンドを、頭だけでなく身体にも響くサウンドへ、そして新たなディメンションへと昇華させたこのレコードの標準となっているのは、ウィリアム・バシンスキ、Warpのアーティフィシャル・インテリジェンス、そしてブライアン・イーノと彼とシンセの達人であるアレッサンドロ・コルティーニとの近年のプロジェクトだ。
「クラブにいる時、頭蓋骨の後ろのあたりで、外の世界のほとんどのことが取るに足らないようなことに思えてくる瞬間があって、僕はそのことについてすごく興味があるんだ。閉じた目とは逆に、両手は空を仰いでいて。この考え方で過ごす時間が長くなるほど、もっと深くハマるはず」
アヴェリーにとって(テムズ川の麓に置かれた運送用のコンテナの中にある彼のスタジオで行われた)「Song for Alpha」は、「それは地政学的な理由による理由からのものだったのか。それとも、お気に入りのクラブはただ不条理に閉店へと追いやられたのか?」という外の世界のカオスとホワイトノイズからの解放を表現したカタルシス的なものであった。
「最近、僕らのコミュニティは難しいニュースで溢れていて、僕らはネガティブなエネルギーと避けられないノイズに包まれている。僕にとって、このタイミングでレコードをつくり、仕上げることは必然だった。これは、世の中のクソみたいなことから引き離してくれる音楽のパワーを思い出すため、それから暗闇に光をもたらすためにつくったもの。愛こそが世の中を前進させるもので、それが僕にとって最大のインスピレーションなんだ」
そのスピリットと愛情が「Song for Alpha」には詰め込まれており、それはクロージングトラックの「Quick Eternity」から最も顕著に聴き取ることができる。激しいキック音、天国のような美しいアンビエンスと強烈な歪曲、目が回るようなエフェクト、そして現実世界の灯りへと導いてくれるようなアナログ ・ドローンへと、次第にフェードアウトしていく。溢れだした感覚が、朝の4時に知らない人から受け取るハグのように包み込んでくれる。混んだクラブやタクシーの後部座席、ヒースロー空港、もしくは自分の頭の中であろうが、この素晴らしい瞬間に逆らうことは不可能だ。
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